中東の悲劇は続く、イスラム国の非道が世界を震撼

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歌人の中城ふみ子が６０年ほど前に詠んだ一首。
＜遺産なき母が唯一ものとして残しゆく「死」を子らは受け取れ＞。
乳がんに侵され乳房を切除するも３１歳で力尽く。
３人の子へのいとうしみと無念が胸に迫る。

わが子をいとうしみつつ逝った母がここにも。
あの過激派組織が占領するシリアの街で戦闘員となった息子に持ち掛ける。
「一緒に逃げよう」。
死なせたくない、この地獄から救ってやりたいとの一心で勇気を奮って。

ところが親の心子知らずであった。
あろうことか息子は、逃亡をそそのかされたと組織に伝えてしまう。
やがて指導部から公開処刑を命じられるや、言われるままに数百人の住民が見つめる前で銃の引き金を引いたという。

何ともおぞましい。
母の悲観のほどは想像を絶する。
それでも銃口を向ける子の行く末を、再期まで案じたのではないか。
それが母親というものだから。
母の血に手を染めた息子は、その「死」をどう受け止めているのか。

湯川遥菜さんと後藤健二さんが殺害され、まもなく１年。
残された肉親の悲しみはまだ癒えていないだろう。
一方、遠い中東ではきょうも、多くの母親がいとしい存在を失うまいと、胸に抱いているに違いない。

タグ：イスラム国 非道 中東の悲劇