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「思い」は「体」と同義語、情念の漫画家谷口ジロー逝く [訃報]

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「思い」は映画界の決まり文句である。
現場で助監督がよく口にするらしい。
例えば「次の場面は食後1時間たってる思いで、食卓は紅茶だけです」。
あるいは「思いとしては、主役は家にいったん戻って背広で手ぶら。いいですか」と。

「体(てい)」とも言い換えられる言葉だろう。
脚本に省かれている設定を読み取り、画面の隅々みまで気を配る。
部屋のしつらえや登場人物の手元一つに、作り手の意図がこもっているなら、観客の側の味わいも深まるはずだ。

漫画界でそれに精魂を傾けた一人が、悲報に接した鳥取市出身の谷口ジローさんだ。
作家関川夏央さんと組んだ「『坊ちゃん』の時代」、久住昌之さん原作「孤独のグルメ」と人気作を世に送ってきた。

地面に落ちる影の濃淡で季節を描き分け、雲の景色一つで暑さや涼しさを表そうと心掛けた。
一こまだけに丸一日を費やしたこともあると聞く。
「小津安二郎監督の描写をほうふつとさせる」と日本以上にフランスで名を知られ、勲章も受けている。

中国地方の最高峰、大山を遠く望んで育ったせいか、山岳漫画はお手の物だった。
母なる山が大雪をかぶった時に不意の旅立ち。
どんな「思い」だったのだろう。


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