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厳寒に耐えてきりりと香る寒梅のごとき、藤沢文学の極致なり [世相雑感]

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藤沢周平.png

大寒が過ぎ、広島市の縮景園では、梅のつぼみがほころび始めている。
各地に大雪をもたらした冬将軍のせいか、少し寒さで固くなったよう。
それでもかすかに漂う香りに、春の足音を感じる。

今日は没して20年になる作家、藤沢周平さんの命日。
「寒梅忌」と呼ばれる。
厳寒に耐えながら、きりりと咲く冬の梅を、藤沢さんの人柄や作風に重ねている。
故郷の山形県鶴岡市では毎年、追悼の催しが開かれる。

江戸の世に生きる市井の人々や下級武士の哀歓を丹念に描き、「蝉しぐれ」「三屋清左衛門残日録」などの名作を数多く残した。
信長や秀吉などの戦国時代の英雄物語に比べればいかにも地味である。
それこそ寒梅のような味わいだろう。

藤沢作品には、じわじわと染み込んでくるような温かみがある。
若いころには困窮し、結核で病床にも長く伏した。
自ら辛苦を重ねたことから、人間の心の内を見て取る慈しみのまなざしが育まれたのではないだろうか。

ことしは生誕90年にも当たる。
出版社によるフェアをはじめ、映画やテレビでも作品の映像化の動きが相次ぐ。
これまで知らなかった「寒梅の人」の世界に接したなら、春の訪れが香ってくるかもしれない。


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